名前が出たらまず検索? 専門学校生 遺体遺棄事件に見る、事件報道とSNSの因果関係。
事件内容がセンセーショナルであればあるほど、個人情報が暴かれ、晒されていく。
……と、思いきや、むしろ事件関係者自身が個人情報を晒していただけで、暴くも何も、世界中にプロフィールや好みや行動を発信していたものを、検索して繋ぎ合わせただけだったりして。
SNSは、マスコミの仕事を楽にし、質を落としたな、と思う訳だが…。
専門学校生 遺体遺棄事件
女性の遺体を遺棄したとして、警視庁は10日、住所不定、無職熊沢義信容疑者(27)を死体遺棄の疑いで逮捕し、発表した。容疑を認めているという。
同庁は、女性は熊沢容疑者の知人で、専門学校生の谷口夏希さん(20)とみて身元確認を進めている。
捜査1課によると、熊沢容疑者は3~9日ごろ、東京都練馬区平和台4丁目の学生寮から女性の遺体を運び出し、レンタカーで福島県いわき市の駐車場まで運んで遺棄した疑いがある。
谷口さんと「交際していた」と話しており、3日深夜、学生寮の谷口さんの部屋から布団を台車で運び出す様子が防犯カメラに写っていたという。警視庁は、熊沢容疑者がこの時に谷口さんの遺体を運び出したとみている。防犯カメラなどからレンタカーを特定し9日、いわき市内で職務質問した。
学校から11月29日以降欠席しているとの連絡を受けた谷口さんの父親が7日、部屋を訪ね、ベッドの上の血痕を見つけて110番通報した。室内には殺害をほのめかす熊沢容疑者のメモが残されていたという。
(引用元 https://www.google.co.jp/amp/s/www.asahi.com/amp/articles/ASLDB4D0MLDBUTIL03J.html)
痛ましい事件だが、これを、さしたる取材もせずに、公共の電波で垂れ流している番組がある。
実名報道後の流れ
ふたりの実名が報道された時点で『特定班』と自称したり他称されたりしているネットユーザーが、我先にと作業を始める。
行われるのは、被害者と加害者の、SNSアカウントの特定だ。今回は、加害者はFacebook、被害者はInstagramが、早々に特定されている。
一番簡単なのは、報道の写真での画像検索。
同じ画像がSNSにアップされていれば、いとも簡単に特定できる。
画像検索でハズれれば、同姓同名のアカウントの中から、報道と同一人物の画像や、持ち物、友人、居住地等で絞り、洗い出していく。
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そうして、ネットに『自ら晒していた』情報をかき集めて、次に作られるのは『まとめサイト』。
この報道から1日がたった現時点で、既にいくつものまとめサイトが作られている。
ふたりの名前で検索すると、報道サイトよりも、まとめサイトの方が上位に来ている有様だ。
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まとめサイトを見た上で、翌日、ワイドショーを見ると、まとめサイト上の情報から、それっぽいパネルを作ったな、とわかる時がある。構成やコメントを、まるごと引用している時があるのだ。
まとめサイト自体が引用の集合体だから、この場合ワイドショーで話している事は『引用の引用』となる。
そうして、ゴシップ好きのネットユーザーなら既に知っている情報を、さも新情報であるかのように放送するのだ。
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非ネットユーザーが『新情報(笑)』に沸いている時、一方で、不思議な事象が起きている。
『番組の報道内容のテキスト化』だ。
番組での解説、コメントを、全てテキスト化する。その日の夜や、明日の朝のニュースサイトに載せるためだ。
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そして翌日。前日の番組を元に書かれた記事のコメントにコメントし、まとめサイトが増え、まとめサイトの内容をまとめて番組が作られ、番組で語られた事が記事になり…、の、無限ループである。
ご遺族の心情などお構いなしに、被害者と加害者の特定や暴露は進み、その情報源が当事者自身のSNSだったりするから、事件への恐れや同情が、違うものにすり替わっていく。
そんなSNSを止めたくても、立ちはだかるのは『デジタル遺産問題』。
パスワードがわからず、公開を止めるにしても、手順を踏んでいる間に情報は拡散され続ける。
色々な意味で、いたたまれない。