物流停止はこうして起こる。札幌市に見る、停電から始まる『負の連鎖』
傾く建物、波打つ路面、陥没した所から、漏れた水が溢れ出す。それが、札幌だとは到底思えない。
そんな中、物流が止まっている現実が、更に追い討ちをかけている。
停電により止まる物流、最初はガソリンから…。
貯蔵施設を持つ会社の一つ「苫小牧埠頭」によると、ガソリンは十分な量があった。
だが、地震発生直後に停電が起き、タンカーで運ばれたガソリンなどを荷下ろしする港の貯蔵施設が一時停止。
ポンプでくみ上げてタンクローリーに移す作業ができず、出荷できなくなった、とのこと。
7日から非常用電源を使ってタンクローリーへの出荷を再開したが、いまも丸一日止まった分を補いきれていない。
これにより、ガソリンスタンドは給油量を制限。
中央区のコスモ石油系の北一条サービスステーションでも、1回の給油を3千円までに制限した。
ハイオクが入荷できていないため、断る場面もあり、マネジャーは、
「いつタンクローリーがくるのか見通せない」
と語った。
(https://www.asahi.com/sp/articles/ASL984TL4L98UTIL01Q.html?iref=sptop_8_03より一部改変、以下も同様)
ガソリン不足と信号機停止で、走れないトラック。
運送会社もガソリンが足りず、長距離のトラックを出せなくなった。
停電もまた、トラックを出せない一因になっている。
多くの地域が停電したままで、信号機が止まり、道路の安全が確保できなかったため、北海道内大手の運送会社「松岡満(まつおかまん)運輸」では6、7両日、ほとんどトラックを出せず、荷物を預かることができなかったという。
トラックだけでなく、貨物列車まで止まり…。
JR貨物によると、北海道内を発着する貨物列車は地震直後から、すべてストップしている。
本州と道路でつながっていない北海道は、貨物列車が通る青函トンネルが大きな役割を果たしている。この時期、本州に運ばれる荷物は、収穫期を迎えたジャガイモやタマネギといった農作物が多い。
農畜産物の生産が盛んな十勝やオホーツク地方の産地には、農産物が山積みのままだという。
JR貨物は9日未明に運転再開を目指している。
来ないトラックを待つ小売店は…。
トラックが走らず、貨物列車も走らず。
物流が止まると、小売店はどうなるのか。
コンビニエンスストア
道内の弁当製造業者の工場が停電で動かず、素材も届かない為調理ができず、出荷がストップ。
弁当、総菜パンなどね棚は空で、とりあえず、おでんなどを買って帰った人も多い。
北海道内に約1100店を構える最大手のコンビニ「セイコーマート」を運営する「セコマ」によると、卸業者やメーカーの工場が完全に復旧していないため、全店で品ぞろえが元に戻るか、「見通せていない」とのこと。
スーパー
北海道内でスーパー「東光ストア」や「ラルズ」などを展開する「アークス」、イオン系のスーパー「マックスバリュ北海道」は大半で営業を再開。
だが、乳製品や豆腐などは工場が稼働し始めたばかりで「納品量はよくても週末で通常の2割、週明けでも5割くらい」(マックスバリュ広報)とのこと。
ある大手スーパーの担当者は、
「電気がとまると、こんなに大変なことになるとは思わなかった」
と話した。それが全てだと思う。
『停電』と言われると、私達は、
室内が暗くなる
携帯電話の充電ができない
冷蔵庫の中身が痛む
トイレが流れない
その程度しか思い浮かばない。
それが、ガソリン不足による物流の停止に繋がるところまで、思い至らない。
だが、停電の影響は時が経つほどに重くのしかかり、復興を遅らせていく。
あるコンビニエンスストアでは、自動車の電源を使ってレジを動かし、混雑を回避したことが賞賛されていた。
そういう機転やノウハウを共有し、普段からガソリンを満タンにして自己防衛しておく他に、できることはないのだろうか…。