高齢者運転『逆キツネポーズ』ができなければ免許返納がおすすめ? 危ない兆候とは
高齢者が起こす事故が、相次いでいる。
同時に、免許を返納しない高齢者を、開くと断じるような論調も多く聞こえてくるが、免許と同時に失うものは、生活の足、通院の足、そして何より、『自分で移動し、生活できる』という自信と誇り。
免許返納を促す息子に暴力を振るい、事件化した事例もあって、本当に難しい。
だが、運転免許証は、安全運転ができる証しではない。
高齢者運転「本当に危ない兆候」
以下は週刊文春が、各専門家に確認のもとに監修したもの。
①運転に自信がある
・盛岡市内の65歳以上を対象にアンケートを行ったところ、運転には『自信がある』『自信が少しある』が9割以上で、自信ありの割合は年齢が上がるほど増加していた。
(交通工学専門 元田良孝・岩手県立大名誉教授)
②雨天や夜間でも運転する
・自信過剰な高齢ドライバーほど、事故が多い雨天や夜間でも、“自分だけは大丈夫”とハンドルを握り、事故を起こす。
「どんな人でも年を重ねれば、視野が狭くなり、注意する機能も衰えてしまうもの。
その衰えは、交差点の右折など歩行者や対向車など様々な対象を捉え、危険を予測し判断をしなくてはいけない場面で如実に現れます」
(NPO法人「高齢者安全運転支援研究会」事務局長 平塚雅之氏)
③車庫入れに手間取る
・昨年10月、山形県鶴岡市の駐車場で、85歳の男性がバックで車を出そうとして急加速し、誘導していた妻を轢く事故が発生しており、似たような事故が多々発生している。
「高齢者は空間認知能力が若い頃よりも低下しています。そのため、後ろを見ながらの操作になると、他の車両との位置関係や速度などを瞬時に把握できなくなってしまう。
車庫入れで斜めに停めたり、切り返しが増えるなどバックが下手になり、ひどいと車に傷をつけるようになる。家族が普段からよく確認しておくといいでしょう」
池袋で母子が犠牲になった暴走事故を起こした飯塚幸三氏も、バックで車庫入れする際に何度もハンドルを切り直しては失敗し、妻から細かな指示を受け、ようやく駐車をする場面が目撃されていた。
これが“本当に危ない兆候”だったということだ。
④ウィンカーを出し忘れる
「交差点で曲がる際、ハンドルを切ることばかりに気が取られ、ウインカーを出し忘れていたら要注意。一度に様々な方向に注意を分散できなくなるのは認知機能低下の兆候です」
(慶應義塾大学医学部 三村將教授)
⑤アクセルとブレーキを踏み間違う
これは車を停める時や、ドライブスルーや、有料道路の料金所、駐車場の出口などで、よく起きている。
「高齢者は体の柔軟性が低下し、意識が右側に向けられている時、足元も無意識に右側にズレてしまう傾向がある。つまり本人はブレーキペダルを踏んでいるつもりでも、右側のアクセルペダルを踏んでいる可能性がある」
(福山大学 関根康史准教授)
「右の窓を開けて操作する場面では、足の動きやパーキングブレーキを入れているかなどを確認しておきましょう」
(前出・平塚氏)
⑥運転中の会話を嫌がる
「運転しながらの会話を嫌がるのは、通常の運転の注意や判断で手一杯となっている証拠。首の上げ下げをしなくなり、『止まれ』の標識や黄色、赤信号などを見逃しかねません」
(同前)
⑦「逆キツネポーズ」ができない
認知機能の低下を簡単に確かめられる、下記のポーズが取れない場合も、認知機能が落ちているという。
「キツネのポーズを両手で作って、片方の手を反転させて胸の前で人差し指と小指をくっつける。親御さんに一度、『このポーズをそのままやって』と言って同じポーズが出来るか試してみて下さい。もしキツネを反転させられなかったりしてうまく出来ないようであれば、空間認知の機能が低下している可能性があります」
池袋での暴走事故から
あの事故以降、自分の親の運転を案ずる声が、多くあがっている。
75歳以上のドライバーによる死亡事故は、2017年で418件、2018年は460件。
認知機能検査は3年に一度だが、認知症の人と暮らしたことがあれば、症状が3年でどれだけ進むかがイメージできると思う。
「17年に道路交通法が改正され、75歳以上の高齢者は3年ごとに教習所などで認知機能検査を受けることが義務付けられた。免許更新は厳格化されたはずでしたが……」
(同前)
飯塚氏も85歳の時にこの検査を受け、問題ナシと診断され、運転していた。そのことが、認知検査や免許の更新・返納を、どう変えていくのか…。