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足立区の住宅に放置の500人分の人骨と、インドのレッドマーケットの存在。

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 この報道は、人体をパーツとして取引する『レッドマーケット』と、何か繋がりがあるのだろうか…。

 

足立区に500体分の人骨が…

 東京都足立区の住宅敷地内で約500人分の頭蓋骨を含む大量の人骨が見つかった。22日、警視庁西新井署への取材で明らかになった。

 住宅は骨格標本を取り扱う業者の事務所を兼ねていたといい、同署が経緯を調べている。

 同署によると、昨年11月上旬、この住宅に住む男性が死亡しているという通報が親族からあった。男性は病死だったが、署員が駆けつけたところ、室内や庭などから大量の骨が見つかった。

 鑑定の結果、人骨と判明した。関係者は

「何十年か前に標本用の人骨をインドから輸入していた」

と話しているという。

 現場は日暮里・舎人ライナー扇大橋駅から東に約1キロの住宅街。

(引用元 https://mainichi.jp/articles/20190222/k00/00m/040/126000c

 人体の標本といえば、中国で『生産』され、『人体の不思議展』で話題になり批判を浴びた、文字通り『本物』の標本の件を思い出す。

 遺体や臓器に含まれる水分と脂肪分を合成樹脂に置き換え、プラスチックの造形品のような質感を与えて保存する「プラスティネーション」製のものだ。

 だが、今回の件は、まったく違うもの。『標本用の人骨』が、インドから運ばれていたと聞いて思い当たったのは、数年前に読んだ、ある書籍のこあてである。

 

人体を売る『レッドマーケット』

『レッドマーケット 人体部品産業の真実』

スコット・カーニー著/講談社

 これは、人間の体がパーツとして売買されているマーケットを、著者が徹底的に取材したもので、移殖用の臓器はもちろんのこと、骨、靱帯や角膜、心臓、腎臓、卵子、血液、毛髪……というか、もう人間自体が世界中で取引されている、という内容のものだ。

 本書によると、世の中のマーケットは、3種類に分かれるという。

・ホワイト(合法で公明正大な取引)

・ブラック(銃器・麻薬の密売など不法商品・サービスを取引など)

・グレー(海賊版DVDや課税を免れる収入など)

この3つだ。

 だが著者は、

「人の身体をめぐる社会的なタブーと、より長く幸せな人生を送りたいという個人の欲求が衝突したときに生まれる、矛盾の産物」としての取引が発生している、第4の市場を「レッドマーケット」と名づけた。

 以下はこの本の概要であり、足立区の標本屋にも無関係ではないと、私が勝手に思っているものなのだが、食事中の方や、猟奇的な内容に耐性のない方にはおすすめしない。

 

インド…国境の町の『骨工場』

 著者は「骨工場」の調査中に、大量に隠されていた頭蓋骨や骨の小さな新聞記事を読んで、インドの国境近くの町『ジャイガオン』を訪れる。

 警官に案内されたのは、人骨がぎっしり詰まった、3つの部屋。骨は全て、墓から盗まれたものだった。

 横笛に加工する途中の頸骨。

 頭蓋骨のてっぺんで、ブータンチベット仏教の僧侶が使う、祈祷用の碗を作る為に、ノコギリで切断された頭蓋骨。

「墓の盗掘をはっきりと禁止する法律はないと思いますよ。だから、彼らは捕まっても釈放されるでしょう」(p5より)

 現地の警官がそう言うのだから、救い用がない。

 

骨工場

 著者は、アメリカの医学教室が使う骨格標本を作る「骨工場」を調査していた。アメリカの教室にある骨格標本のほとんどが、インドからきたものだったからだ。

 だが、1985年にインド政府が人体組織の輸出を禁じた結果、マーケットは地下に潜り、変わらぬ需要に応え続ける。そのうちのひとつが、インドのウエスベンガル州の片田舎にあった。

「ウエスベンガル州のレッドマーケットの売人たちは、遺体を墓から盗み、固いカルシウムを軟らかい肉片から取り去り、骨を卸売業者に提供する。

 そういう古来の手法にのっとって、人間の骨格と頭蓋骨をいまも供給しているのだ。卸売業者は骨を組み立て、世界中のディーラーへと送り出す。海外では7万ドルの値がつくだろう。」(p65より)

 

 骨に関係する記述の他、本書の中では、他に、臓器売買、誘拐した子の養子縁組ビジネス、卵子の売買とデザイナーベビー、政府公認の代理母産業、血液農場、寺院で剃髪された人毛の売買…と、人の体をモノ扱いする、おぞましい実態が続く。著者は、こう締めくくっていた。

 

「犯罪者たちは『プライバシー保護』のお題目のかげで、非合法の供給チェーンを守ることができるのだ」

 死者にはプライバシーがないから、事件があると、まず被害者だけが実名報道される。日本だって似たような者だし、事実、500体分の人骨が見つかった。

 日本のレッドマーケットは、どこに存在するのだろう…。