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夜逃げ生活から年商20億円のチェーン店への逆転劇!TKO木下の幼少期と、夜逃げの現実。

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 『貧乏を 知らせず育てた 父の愛』

 見栄と言われればそれまでだが、子供を持った男なら、同じ事をするかもしれない。

 

TKO木下、幼少期を告白。

「ウチは、おとんが会社をつぶしてしまって借金が1億円もあったんですよ。

 4歳ぐらいからですか、福岡や大阪を転々として、中学までに11回、転校を繰り返したほどで。要は夜逃げですよ。

 だから普通なら貧乏ネタの一つや二つあってもいいんですけど……僕は『貧乏だけど、お坊ちゃま』だったんです」

(引用元 https://nikkan-spa.jp/1542941 以下、斜体部分も同様)

 会社を潰した父親に、1億円以上の借金があったにも関わらず、木下はその深刻さに気づかずに育ったという。

「もうね、家族が僕に必死に隠していたからですよ。僕は4人兄姉の末っ子。見えっ張りなおとんが『タカ坊には気づかせるな』と。

 だって夏休みには、毎年、家族全員で旅行するんですよ。誕生日やクリスマスもちゃんとやっていた。誕生日に超合金のロボットをねだって、普通に買ってもらえるんです。

 お年玉だって中学のときかな、3万6000円も集まった。超合金持ってて、お年玉で買い食いする貧乏な子はいないでしょ」

 貧乏を隠す為、父親は借金を重ねた。だが、取り立て屋の手は、どこにいても伸びてくる。

 

夜のドライブ

「時折、夜になると『みんなでドライブ行くぞ』と2時間ぐらい車で出かけるんです。

 アパートに戻ると、両親は『車で待ってて』と子供を残してアパートに向かう。

 それを僕は『謎の10分』と呼んでたんですが、上の兄貴2人と姉は、何をしているのか、知っていたんでしょうね。親についていこうとする僕をがっちり押さえていましたから」

 部屋の扉には借金取りの張り紙。

 「カネ返せ」「ウジ虫」「殺すぞ」

 借金取りが来るとわかったら『夜のドライブ』に出かけ、家に着いたら『謎の10分』で張り紙を剥がして、何事も無かったように、末っ子を家に入れる。

 アルバイトもできない、戦力にならない、幼い末っ子。その末っ子だけは…という、愛情を感じる。 

 正しくはないかもしれない。それでも…。

 

父親の夢

 続く借金生活と、気づかない末っ子。

 だが彼は、父親がガンで亡くなり、初めて借金のことを知った。

「借金生活でボロボロのおとんにとって、心の支えは、貧乏と知らずに育った甘ったれなお坊ちゃん体質の僕の無邪気さと、もう一つ、『いつか焼き肉店をやりたい』でした。

 それで就職していた兄貴たちがカネをかき集めて、家族全員で焼き肉店を出すことになった。

 おとんもね、1週間ぐらいかな、厨房に立って……。夢が叶ったのを見届けるように、直後に亡くなりました」

 父親の死期を感じて、夢を叶える為に奔走した兄達。何も知らなかった末っ子。

 いい家族だったんだな…と思う。


焼き肉屋が15店舗に…

 父親が亡くなった後は、兄達に自由にしろと言われ、松竹に入って芸人を目指す末っ子。

 彼の芸人デビューに合わせて新メニューを登場させた「元祖鉄板鍋きのした」は、のちに年商20億円となる「きのしたグループ」に成長する。看板メニューは『鶏ムネ肉と白菜の鍋』。

「僕が4歳の頃、ホンマにしんどかったんでしょうね。おかんが僕ら子供を車に乗せて『このまま、崖から落ちようか』と言いだしたんです。僕以外、みんな号泣ですよ。

 ただ、よくわかっていなかった僕は、『おとんと、浦島太郎ごっご、もうできへんの?』と聞くと、おかんが『そうやね、まだ、浦島ごっこ、したいよね』と、思いとどまったらしんです」

 その夜に家族で食べたのが、その鍋だったという。母親が畑を手伝ってもらってきた白菜と、一番安いムネ肉の鍋。

「それに負けないよう、僕も芸風を広げる努力をしてきた。いまの僕があるのは、あの鍋のおかげなんですよ」

 彼の柔らかい表情は、父親の愛情と、それを継いだ兄弟の愛情故のものだと思うと、胸が詰まる。

 だが、彼のように『夜逃げ人生からの返り咲き』を果たす人は、もちろん一握りである。

 

多様化する夜逃げ

 この木下のように、以前は夜逃げの理由といえば、借金が多かった。だが最近では、その夜逃げの理由も多様化してきている。

 ストーカー、離婚のトラブル、DV、家庭内暴力、詐欺事件に巻き込まれた、身内の不祥事による周囲からのバッシング、ネット関連のトラブルで身元を特定された…等。

 嫌がらせを受け、身の危険を感じて緊急避難という場合もあり、いわゆる『夜逃げ屋』と呼ばれる業者を利用して、行政書士などの支援により、法律に触れない範囲で逃げるは人々も出てきた。

 だが現実は厳しく、日本で唯一の正規運送店として夜逃げを扱った運送会社「ライフボード(映画 夜逃げ屋本舗のモデル)」は、7000万円の負債によって閉鎖している。利用者は全員わけあり、善意だけでできるビジネスではないのだ。

 また、逃げた側には行政上の不利益も出てくる。

 夜逃げが成功しても、新天地に住民票を移すと、居所を知られてまた追われる事が多い為、住民票を移しづらくなるのだ。

 そうすると、行政上のあらゆる手続きができなくなる。生活保護の申請ができない。保険証を持てない。出生届が出せない場合が一番悲惨で、生まれた子が、戸籍に載らない未就籍児になる。

 

 だったら追われるような生活をしなければいい。

 そう思ってしまいがちだが、いつ何が起きてもおかしくないのが、今の世の中だ。

 明日は我が身と思いながら読んでみると、亡くなった木下の父親の、深い愛情と、男としての矜持を感じる。

 借金をしてまで我が子に見栄を張り続けるのは、正しくはなかったかもしれない。それでも木下にとっては良い父親だったから、『鶏ムネ肉と白菜の鍋』が、今でも看板メニューなのだ…。