ダウン症の女性に『ダカールラリーにダウン症の男性が歴史的参戦』のニュースについて聞く。
私には、『知的障害がないダウン症』の友人がいる。
会って顔を見れば、ダウン症なことを思い出すが、メールや電話でやりとりしていると忘れてしまう。
知的障害が、もしかしたらあるのかもしれないが、話していて特に感じた事がないし、パソコン関係や美容関係については、むしろ教えられることの方が多いので、気にしたことがない。
滑舌は少し悪いが、それは体の構造上の話だし、聞き取れなかった事もない。
粘膜の弱さから、風邪が重症化しやすくて、入院が多いことを除けば、普通の友達である。
昨日、年始の挨拶がてらに職場近くに立ち寄ったら、マスクとクレベリンをしていた。完全防備だ。
「ごめんね、こんな格好で」
「ごめん、こっちもマスクする」
私の気がきかなかった。
恥ずかしながら、マスクを一枚頂いて談笑していると、彼女の方から話を振られた。
「このニュース、見た?」
ダウン症の男性、ダカールラリーに出場
ここからは、斜体部分の記事を元に、彼女のツッコミを足していく。
(記事引用元 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190106-00000005-jij_afp-moto)
6日にペルーで開幕するダカールラリー2019(Dakar Rally 2019)では、25歳のルーカス・バロン(Lucas Barron)がダウン症患者として初めて大会に参戦し、10日間に及ぶ世界一過酷なラリーで歴史を刻む。
「とりあえず、結果が出てからの報道でよかった。ダウン症だからって応援されたくない。条件をクリアしての出場なら、報道含めて普通の選手として扱って、終わってから『実はダウン症だったんだよ』が、いい。私なら」
コースの70パーセントが砂地である全長5000キロメートルのレースで、父親であるジャック(Jacques Barron)のコ・ドライバーを務めるルーカスは、AFPの取材に対して
「目指すは完走だ。目標を達成したい」
「このレースは自分にとって最高だ。ルートは熟知しているから走りやすいだろう」と語った。
(コ・ドライバーとは、ラリーなどの自動車競技においてドライバーと共に車両に乗り込み、走行の手助けをする選手。「ナビゲーター」「ナビ」「コ・ドラ」とも呼ばれる)
「コ・ドライバーの役割とか、重要度を、もっと説明してほしい。ラリーを知らない人なら『パパの隣に座ってるだけじゃん』『どうせパパが道覚えてるんでしょ?』ってなる。でも、そんなに簡単なものじゃないよね?」
これまでダカールに合計5回参戦している父親と一緒に1年半トレーニングを積んできたルーカスは、2017年に新設されたUTV(多用途四輪車)部門でオフロードを走る。ルーカスはあふれんばかりの笑みで
「準備はできているし、砂丘を攻略してみせる」
と意欲を口にした。
「砂漠なんだ…砂埃、怖くないのかな…。鼻とか喉とかの粘膜弱いダウン症の人が多いから、肺炎とか怖いんだけど。10日ならギリギリ大丈夫かな。私なら、終わったらすぐ病院とかかも」
他にも水泳をはじめサッカー、サイクリング、サーフィン、水上スキーなどをたしなむ生粋のスポーツマンで、お気に入りの音楽はロックとヒップホップだというルーカスは、父親のメカニカルアシスタントという重要な役割を担うといい、
「エンジン、ロード、タイヤの様子を確認する手助けをする」
と明かした。
「この紹介、なんかヤダ。普通の人と同じもの好きなのが、そんなに意外?って思っちゃう。私だって、フツーにGReeeeN好きだよ。頭とか心には障害ないダウン症の人だって、いっぱいいる」
今大会はアルゼンチン、チリ、パラグアイ、そしてボリビアが緊縮政策で開催地から撤退したため、全行程がペルーで行われることになっているが、ルーカスは同国の首都リマ出身で母国の地形に慣れている。
昨年9月には、本番への準備としてダカール・シリーズの一つデサフィオ・インカ(Desafio Inca)に参加し、南部にあるイカ砂漠(Ica Desert)を走って7位に入った。
「あ、ホームで結果出してて、地元の人に応援してもらえるのは嬉しいかも」
ダウン症は生涯にわたり知的障害や発達遅延を引き起こす可能性がある。
しかし、現在56歳の父ジャックは、ダカールの主催者は息子の参加に何の懸念も示さず、必要なのは他の競技者と同様にメディカル検査に合格することと、必要書類を提出することだけだったと明かした。
「どんな内容かわかんないけど、いいメディカルチェックだったね。日本なら、何かあった時に責任取れないからとかで、落とされるか、念書書かせるかになると思う。主催の英断なのか、国民性なのか…」
「ルーカスはすでに、ダカールに参戦するための国際自動車連盟(FIA)のライセンスを取得している」
というジャックは、ルーカスが何も恐れておらず、問題があった場合でも対処法を分かっていると強調した。
「彼はベルトやオイルの温度、タイヤの空気圧の見方を分かっている」
「ルーカスの目は、他の車や障害物と衝突するのを避けるための車の目になる」
「ダウン症の人々でも、ある程度の能力は発達する。ルーカスはどんなスポーツもこなせるんだ」
「観察力があったり、耳や鼻で異変を感じたりとかもあるかもね。このお父さん、色々なスポーツやらせたのは、合うのを探してたからかな。だったら、いいお父さんだよ。
そもそもチャレンジする機会がなかったり、あっても『チャレンジさせてあげる』上から目線を感じながら、お願いして『チャレンジさせてもらう』のが、私達だから。少なくとも日本では。24時間テレビ的に、お涙ちょうだいに仕立てたりね(笑)」
彼女とカフェにいると、よく、視線を感じる。
彼女が普通に話していて、知的なことが珍しいのだろうか。
ヒソヒソ話をしているのを見ると思う。
(帰りに事故に遭って、夜には障害者になってるのかもしれないのに。差別なんかしてて、余裕だなあ)
「いいよ気にしなくて。それよりさ…」
私の視線に気づいた彼女が、話題を変えてくれる。
ダウン症の彼女は、私よりもずっと聡明で優しい。
それが、現実である。