自分を広告塔にする為に、月まで行く覚悟はあるか? ZOZOTOWN前澤氏の思惑は
「月に行くことにしました。アーティストとともに」
アーティスト、という言葉で思い出したのは、『コンタクト』という映画の一節。
これは、研究者エリナー・アロウェイが、宇宙の彼方から送られてくる暗号を解読し、そこに描かれていた設計図をもとに建造した移動装置に乗って、こと座の『ベガ』を目指す物語だ。
突拍子も無いSF映画と思いきや、アメリカの天文学者で元コーネル大学教授、NASAにおける惑星探査の指導者であるカール・セーガンが原作者の為、SETIプロジェクト、人類と宗教、科学、政治、地球外生命体、全てを巻き込みながらの物語や、ライバルとなる科学者との駆け引きなど、かなりリアルで骨太な構成になっている。
その中で、神を信じず、1枚しかないベガへの切符を争い、ライバルと熾烈な戦いを繰り広げていたエリナーが、美しい宇宙空間を目にして、しばし言葉を失った後に呟くのだ。
「詩人が来ればよかったのよ」
それまで、浅ましいまでの戦いを繰り広げ、その席をもぎ取った彼女に、自分ではなく詩人が、とまで言わせた『宇宙』。
アーティストとともに、と言った前澤社長は、宇宙を目にし、月に降り立った時、この席は、自分よりも…と、考えたりするのだろうか。
民間人で世界初となる月の周回旅行
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイの前澤友作社長は9月18日午前、自身のツイッター上でこうつぶやき、民間人で世界初となる月の周回旅行を計画していることを明らかにした。
前澤氏は米国西海岸時間の9月17日夕方、米国の宇宙開発を手掛けるベンチャー「スペースX」の本社で、イーロン・マスクCEOとともに記者会見に登壇。スペースXは、同社が開発する超大型ロケット「BFR」での月旅行の初の搭乗者として前澤氏と契約を結んだと発表した。
旅行は2023年に催行される予定で、およそ1週間掛けて月と地球を周回飛行する。
前澤氏は会見でマスク氏と固い握手を交わすと、「これは私の人生における夢だった。とてもうれしく、興奮している」と英語で語った。旅行の金額は明らかにされていない。
「本プロジェクト開始によって、前澤の当社事業への関与が薄まることはなく、当社事業への影響もない」と、スタートトゥデイは明言しており、前澤氏自身も、この月旅行を「個人的な活動」としている。
(引用元 https://toyokeizai.net/articles/-/238271?display=b 以下、斜体部分も同様)
だが、この月旅行が、自らを広告塔としたプロモーションであることは明らかだ。
「#dearMoon」プロジェクト
前澤氏は、今回の月旅行を「#dearMoon」プロジェクトと命名し、画家や音楽家など最大8人の世界的なアーティストを招待すると公表。メンバーは選考を経た上で確定する。
参加者には月旅行の経験で得たインスピレーションを元にした作品を創作してもらい、広く公開する計画だ。
「#dearMoon」プロジェクトを運営するのは前澤氏の個人資産会社の子会社。スタートトゥデイの広報は「弊社との資本関係はない」と説明し、あくまでアートへの造詣が深い前澤氏個人の活動であることを強調する。ただ前澤氏にとって月旅行は、スタートトゥデイの認知度拡大に向けた戦略の延長線上にありそうだ。
「(海外では)“ZOZO”といっても誰も知らない。認知が圧倒的に足りない。世の中にとって新しいビジネスモデルなので、認知さえされれば一定層の方々には比較的早いタイミングで知れ渡る気がする」と語っていた。
その為に、宇宙まで行く。安全が保障されない旅へ、命をかけて。千葉のヤンキーが成り上がったと揶揄する声もあるが、やはり只者ではない。
それでもまだ難癖をつけるとすれば、人類初の宇宙旅行に行けるのが、億万長者の経営者という現実の、夢のなさだろうか。