【計画通り】名瀬港の灯台は、元々台風で消失してもいいように作られている。
灯台が消失?
鹿児島県奄美市の名瀬港では、台風24号が通過したあと、灯台がなくなっているのがわかり、海上保安庁は強風や高波で倒壊したのではないかとみて調べることにしています。
なくなっていたのは、奄美市の名瀬港にある「名瀬港西防波堤灯台」です。
奄美海上保安部によりますと、30日午前9時ごろ、台風24号による被害を調査していた海上保安部の職員が、コンクリート製の基礎部分を残して灯台がなくなっているのに気づきました。
この灯台は、平成元年に海上保安庁が名瀬港の湾に突き出た形の防波堤の先端に設置し、高さは11メートル、軽い素材の強化プラスチック製で、中は空洞になっていて、夜になると赤い光を点滅させていました。
名瀬港がある奄美市では、29日夜から30日朝にかけて、港付近も大荒れの天気となりました。海上保安庁は強風や高波で倒壊したのではないかとみて調べることにしています。
(引用元 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180930/k10011650711000.html)
灯台が流されたと聞くと、多くの人は、コンクリート製のがっしりした物が壊れる所を想像するのではないか。
だが、今回流された灯台は、普通にイメージするものとは、少し違う。
流される事は想定内
灯台が流されたと聞くと、一瞬驚いてしまうが、これは仕様と言えなくもない、想定内の出来事である。
赤い灯台は簡易灯台といって、航路標識として設置は許可されているが、構造や機能が、共に小規模な物。
今回流されたと見られる灯台は、強化プラスチック製。ユニットバスの材料と同じで、記事にもある通り、中は空洞である。
屋外に設置する物を、経年劣化するとわかりきっているプラスチックで作るのには、わけがある。それが、消耗品だからだ。
灯台を設置する場所は、風や波の影響を受けやすい沿岸、しかも岬の突端など。
晒されるのは風雨ばかりではなく、波までかぶって海水の影響を受けるし、灯台が求められる機能上、風雨を遮ってくれる物がない場所に建てられる。
故に、壊れやすいし、流されやすい。
これを鉄筋コンクリートで作ってしまうと、倒壊した場合に瓦礫が残り、撤去や修理の為に、灯台の修復に時間がかかって、船の航行に支障が出る事が考えられる。
壊れ方によっては、船を傷つけてしまう可能性もあり、二次災害に繋がってしまっては、灯台の存在意義を考えると、本末転倒になる。
だが、万が一壊れたり流されたりした場合でも、入れ替えが簡単で、漂流しても危険が少ない構造や素材であれば、二次災害も起こりにくい。
そこで生まれたのが、FRPの灯台。これは、流された場合も想定された、消耗品なのだ。
災害を想定した構造物
この簡易灯台のように、災害時に壊れたり、損失したりする事をあらかじめ想定して作られている物がある。
京都の木津川にかかる、上津屋橋(こうづやばし)に代表されるような『流れ橋』だ。
この橋は、川の水が増水した場合、固定されていない橋板が橋脚の上から流される構造になっており、1枚あたり40 - 50 mある板が8枚、ワイヤーロープで繋がれて載っている。
水が引いたあとは、ワイヤーロープを手繰り寄せて橋板を元に戻す仕組みになっている。
実質的には使い捨てになり、自然界で分解されないFRPの灯台に比べてエコではあるが、こちらはこちらで、土台である橋桁の流出を繰り返しており、問題や批判が多い。
鉄筋コンクリート製の永久橋への架け替えの議論が度々起こるが、橋が流されると観光客が増え、観光資源のひとつになっているのも事実な為、流れ橋の構造はそのままに、75cmかさ上げするという、流されにくくする改良な施され、こちらはこちらで本末転倒だ。
それでも、海にプラスチックの使い捨て灯台を流すよりは、かなりマシなように思えるのだが。
そろそろ、レーザーやプロジェクションマッピングの灯台が、出てきてもいいような気がする。