自然発生だからこそ。『日比谷鉄棒クラブ』に見る、ただそれだけで繋がれるということ。
趣味で出会う、仕事と関わりのない人達。
ゴルフの練習場に行くと、同じ時間帯に、同じ顔が集まる事がよくある。私などは開店と同時に入り、混み始めた頃に打ち終わる。
そうすると、ロッカールームに顔見知りがいて、最初は挨拶だけだったのが、ゴルフの話をするようになる。
共通の趣味で出会った人、しかも、同じ時間帯に会う、行動パターンや生活様式が似た感じの人というのは、すぐに仲良くなれる事が多い。
『趣味と健康』とは、よく言ったもので、そこで話が合えば、少なくとも、悪い印象は抱きにくい。
最初は二人で話していたものが、徐々に数を増やし、自然発生的な小集団になっていくと、なかなかの力を持つ。
人数が増えたが故のトラブルもなくはないが、『リーダーと会費』が発生しない限りは、ただ楽しめる関係が維持できたりもする。
休み時間に鉄棒をしに集まってくる、日比谷鉄棒クラブの人達もそうだ。
最初は一人
好きこそ物の上手なれ。滝沢吉人さん(64)=埼玉県在住=は40年以上、東京都千代田区の都立日比谷公園に通って鉄棒の技を磨いてきた。
鉄棒をやることで手に入れたのは健康、筋肉、仲間たち。人生を語る上で「鉄棒」は欠かせない存在だ。
北側の草地広場の近くにある鉄棒広場には、近くの官公庁や企業に勤めるサラリーマンたちが、出勤前や昼休みにフラリとやって来て、鉄棒の技に磨きをかけている。
手に白い粉をつけ、体操選手のようなアクロバティックな技を披露する人の姿も。
スーツからTシャツにサッと着替え、さっそうと鉄棒に向かうサラリーマンたち。皆さん筋肉ムキムキだ。
(引用元 https://mainichi.jp/articles/20180829/ddm/013/040/020000c)
休み時間のサラリーマンと、あなどるなかれ。
彼らの鉄棒とは、たとえば、こんな感じだ。
日比谷公園で大人たちが鉄棒をするワケとは|日テレNEWS24
いかがだろうか。
体操選手でもなんでもない人達が、次々と大技をきめていく。だが、その横では、ただ一回の懸垂もできない人もいる。それを笑う人がいない環境と人間関係が、ここにはある。
自分だって前はそうだった。ただ、それだけの事なのに、仕事の時は難しい『見守る』ことが、ここではできる。
鉄棒クラブといっても、名簿や会費や決まりがあるわけではなく、来たい時、来られる時に来て、それぞれの目標に向かって練習をする仲間。
動いた後は頭がスッキリする
リフレッシュできる
五十肩で、始めはぶら下がるだけだったけど…
始めた理由も、続ける理由もそれぞれ。だからこそ、始めやすいし、続けやすいのだ。
だが、ここにはもう一つの楽しみがあるという。
新たな社交の形として
「みんなとおしゃべり楽しいじゃないですか。職場も違うし世代も違うし、ほとんどおしゃべり9割で、練習1割って感じですけど」
(引用元 http://www.news24.jp/sp/articles/2018/09/13/07404038.html)
赤の他人とは干渉し合わず、男の井戸端会議なんて…という、妙な慣習は、ここにはない。共通の話題ならある。鉄棒だ。
鉄棒の話をしていれば、自分自身がクローズアップされないから、むしろ気楽に話せるという人もいる。地位も年齢も関係なく、ただ、鉄棒の話だけをしていたって許されるのだ。それをきっかけに、合う相手とは、仲を深めていけばいい。
ここ、日比谷公園は数年前から、休日には『ストリートワークアウト』と呼ばれる、公園や公共施設で、そこにある設備をフル活用して、ハードなトレーニングを楽しむ人達が集まっていた。
日比谷鉄棒クラブは、その進化系。休日を待たず、着替えももたず、休み時間にネクタイだけ外して、ちょいトレを楽しんでしまうのだ。
そう、彼らは、つらいダイエットや筋トレに挑んでいるわけではない。自分自身の目標に、楽しみながら向かっているのだ。仲間と共に。
ただただ、楽しそうで羨ましい、得難い光景である。